六、五徳義相 【出拠】  『大経』「今日世尊奇特の法に住したまへり今日世雄仏の所住に住したまへり今日世眼導師の行に住したまへり今日世英最勝の道に住したまへり今日天尊如来の徳を行じたまふ」(T・四)《一〇》 【所由】 問。何を以て五徳を現ずるや。 答。出世本懐を顕わさんが為なり。 問。何を以て知るや。 答。仏答の「恵以真実之利」より逆見して知るべし。 【義相】  一説 一、入定【大寂定】┬ 総 ─ 世尊奇特法 ──── 体徳 └ 別 ┬ 世雄仏所住 ──── 定体  ├ 世眼導師行 ─ 悲 ┬ 定相  └ 世英最勝道 ─ 智 ┘ 二、出定【行如来徳】─── 天尊如来徳 ──── 定用  一説 入定 ┬ 総 ─ 世尊奇特法 ───── 定徳     └ 別 ┬ 世雄仏所住 ─ 法身 ┐        ├ 世眼導師行 ─ 般若 ┼ 定徳        └ 世英最勝道 ─ 解脱 ┘ 出定 ──── 天尊如来徳 ───── 定用 【問答料簡】 問。第一句を総句とするもの云何。 答。能住の世尊とは総号なり。【翻訳名義集に在り】 問。所住の法如何が総なるを知るや。 答。『如来会』に「希有」と云い、今「未曾瞻覩」という。前後の文に合わせて知るべし。 問。仏所住を何故に法身というや。 答。光寿二無量の果徳即法身にして仏の所住なり。 問。般若を『論註』(T・三四二)に釈して「如達する之恵の名なり」というはこれ実智なり、何ぞ導師の権智に配するや。 答。導師は憬興の釈の如く、衆生引導の義に非ずして、六度の中他の五度を引き回して、如に達せしむるものなれば、導師を智慧と云うなり。しかれば「智慧為上」と説きて、三昧中の最たるを示す。最勝道とは無上々にして、無上々とは真解脱なるが故に、最勝道とは解脱とす。 【已上】