八、法蔵地位 【出拠】  一、『大経』「すなはち無上正真道のこゝろをおこす国をすてゝ行して沙門となる号して法蔵といふ」《一四》  二、『論註』「はじめは法蔵菩薩、世自在王仏のみもとにして、無生法忍をさとりたまへり。そのときの位を聖種性となづく」 【義相】  一義に従果降因の菩薩なれば地位を定むべからずと。又一義に従果降因の因相は云何なるものと定めずんばあるべからず、既に論註に其の時の位を聖種性と名くとあれば地位を定むべきなりと。聖種性とは初地已上の菩薩なり『本業瓔珞経』に六種性を説く。 一、習種性 十住 二、性種性 十行 三、道種性 十廻向 四、聖種性 十地 五、等覚性 等覚 六、妙覚性 妙 覚   又、無生法忍とは、『仁王経』に五忍を説く。 一、伏忍 十住・十行・十廻向位 二、信忍 初・二・三地位 三、順忍 四・五・六地位 四、無生忍 七・八・九地位 五、寂滅忍 十地・仏果  此の無生忍に入、住、出の三ありて第八地を以て当位とす。然れば法蔵の地位は正しく第八地と定むべきなり。  又『論註』《一〇七》不虚作住持の釈に七地已下を未証浄心、八地已上を浄心の菩薩とし、『同』《一四》には「菩薩智慧清浄の業よりおこりて仏事を荘厳す」等とある。然らば安楽浄土は法蔵菩薩の浄業所起にして、此の清浄業とは寂滅平等七地已上の所得の法なり。  又『大論』三八巻二十六丁に「法蔵菩薩六神通」【六神通とは七地の所得】と云ひ、又『同』五十八巻九丁に八地観諸仏国を釈して「六神通を以て諸の清浄世界に飛到し〈乃至〉世饒王仏将に法積比丘に十方に至り清浄世界を示す如し」と言えるを以て知るべし。 【已上】