一四、真仮三願 【出拠】  『真仏土巻』《四七〇》「しかるに願海について真あり仮あり」等。 【義相】  真実願=第十八念仏往生之願  方便願=第十九至心発願之願、第二十至心廻向之願  機に生熟あるが故に、仏真仮の両願を誓ふ。此の仮中に亦機に厚薄あるが故に、第十九願【諸行往生】第二十願【植諸徳本】の二願あるなり。 【問答料簡】 問。一仏の誓願に真仮の両誓あるは如何。 答。前に弁ずる如し。 問。願海に於て真仮の見る所ありや。 答。一、信前行後、行前信後の次第=第十九・二十願は自力行業を因と信ずるが故に、行を前にし信を後とす。第十八願は唯信正因行業相続の次第に依るなり。 二、信楽有無の異=第十八願は唯信無疑の往生、第十九願は発願希求し、第二十願は所修の行を廻向して往生を願ず。 三、乃至有無の異=第十九・二十願の行は正因にして必とす。故に乃至の言なし。第十八願の乃至十念は、一多有無不定の故に行正因に非ず。 四、行体専雑の異=第十九願は諸行、第二十願は助正兼行、第十八願は専修称名なり。 五、抑止有無の異=第十九・二十願は修善の故に抑止すべき必要なし。第十八願は下機摂取の大悲なるが故に、逆謗を抑止して遂に摂取す。 六、余願対照=四十八願中、聞名利益を誓ふて諸行の益を別誓せるが故。 七、重誓偈に対照=四十八願の要を重誓して「名声普聞」と云ふもの思うべし。 問。真仮分別は高祖の私なりや又相承ありや。 答。相承あり『観念法門』の摂生縁に三願を連引し『法事讃』に三往生を出す。又『漢語灯』一(三十九丁)に「今三輩文但念仏往生の義有り、助念仏往生の義有り、又諸行往生の義有り、仏一音を以て法門を演説し、衆生類に随ひ各々其の解を得。仏意多含を以ての故に、今且く三解を作る。次此の三義に付て、傍正を論ずるに、但念仏を以て正と為し、余の二を傍と為す。〈乃至〉助念及び諸行を廃して、但念仏を明すは、上の本願の願成就文に但念仏を明すと雖も、上の来迎の願等の中及び次の三輩の文に助念の往生、諸行の往生を明す。之に依て諸の往生の行者、但念・助念・諸行に於て、疑網を懐て未だ決し難し。故に流通に至て、初には助念・諸行の二門を廃し、但念仏往生を明す。謂く「其彼の仏の名号を聞くことを得る有」」【取意】といへるこれなり。 【已上】