二三、他力廻向 【出拠】 一、『大経』本願成就文の「至心廻向」文 二、『大経』重誓偈の「我於無量劫不為大施主普済諸貧苦」「広施功徳宝」 三、『大経』下巻往覲偈「其仏本願力聞名欲往生」文。 四、『大経』上巻二十一丁「令諸衆生功徳成就」文。 【義相】  廻向に約本約末の二あり。   @廻向したまへり=約本   A廻向して=約末   B廻向せしめたまへり。是に二あり。一に仏より衆生に廻向せしめ給へりとは約末。二に「せしめ」「せしむ」は共に「したまへり」と同じ意に用ゆる時は約本となる。例せば『和讃』の「源空光明はなたしむ」の如し。 問。如何が約本なるや。 答。『願願鈔』(二十二丁)に「至心廻向の四字は成上起下とならふなり。成上といふは、かみの信心歓喜を引起すること、法蔵因中の至心より生ず。起下といふはしもの住不退転の前途を達すること、また至心に廻向したまへる、如来大悲の無縁の慈悲より成ぜらるゝものなり」と信喜一念は上の聞の義を演説し、至心廻向は其の名号を敷演するなり。『論註』の覈求其本に基き、『重誓偈』と因行段の文に照応して知るべし。 問。如何が約末なるや。 答。文に任せば諸有衆生の至心廻向なるが故に約末とす。『選択集』本願章の引用この意なり。又廻向は願生と組み合ふて発願廻向となる。これに多釈ある中、今は約末の義を取る。 【已上】