三二、隠彰顕密 【出拠】  『化土巻』本(六丁)「『無量寿仏観経』を按ずれば、顕彰隠蜜の義有り」等。 【義相】  一、立意  廃立の経意を詳かにせんが為の故に隠顕釈を設く。教主二尊、教義要弘(経説)随自随他(仏意)未熟純熟(機根)観仏念仏(宗旨)廃助傍(釈義)此の故に隠顕釈を設けて横に廃立を知らしむ。  二、本拠  @字訓  隠とは『字彙』に匿也微也。  彰とは『玉篇』に明也文章也。  顕とは『玉篇』に光也見也著也。  密とは『字彙』に秘也稠也と云へり。  A義拠  『序分義』十七丁に経の「時守人白言」等を釈する問答下に「具顕」「彰露」「相隠」「言密」という。蓋し韋提の身儀に約して隠彰顕密の相を寄顕する者なり。正しく法義の根拠は、序題門の二尊教意と念観両宗との二なり【『化巻』本(六丁)に此文を引用す】。  三、義類  一説に顕、彰、隠、密の四とす。  一説に顕、顕彰、隠彰、隠の四とし、密は此の四に蒙る。  一説に顕、顕彰、隠の三とし密は別義なしと。  一説に隠彰、顕の二にして密は之に含むと。  一説に顕密と隠彰との二とす。  一説に判目は四、義相は三、法体は二、旨帰は一なりと。  今曰。第四説を勝とす。  一に顕と標して顕と結し、彰と標して隠彰の義と結す。  二に『略書』及び『御伝記』に隠顕の二とす。  三に『小経』に唯隠の文なきが故に。  四、問答 問。密の文義見え難し。如何。 答。密は説相にあらず、隠と説き顕と説くの仏意を顕はす「意密難知」(『散善義』二丁)と同じ。 問。経文直に隠顕の見込み如何。 答。順見すれば、定散両門を宗とす。付属持名より逆見すれば、念仏為宗となるが故に隠顕の義を成ず。 問。隠と彰とは正反対なり。何ぞ同とするや。答。顕は元より表にあらはれたる顕明なるものを云ふ。彰は隠れたる者のあらはれたるを云ふ。喩へば雲龍の図の如く、雲表(顕)に龍の足尾を見る(彰)と雖も、頭及び鱗を見ざるが如し(隠)。見ずと雖も龍の全体を雲中に覆はるゝ雲龍の図画(説相)のなるなり。故に彰は隠の鑰(やく)なるが如く隠あることを指図したるが彰なり。依て隠彰を一義とす。 、文例  『化巻』本(六丁)に十三文例を出すは、悉く隠彰の文例なり。  顕詮には文例を出すの要なきが故に、後の二文に私釈を缺くものは所釈とする意なり。元来隠顕釈は三心為要より起るが故に、二種三心二種往生は隠顕の根本なり。此の中顕の文例知り易きが故に略せるなり。 【已上】