三五、韋提得忍 【出拠】  一、『観経』中得忍を談ずる文四。  @序分の「我今楽生極楽世界阿弥陀仏所」  A示観縁の「心歓喜故応時即得無生法忍」  B第七観の「見無量寿仏接足作礼」  C得益分の「得見仏身〈乃至〉得無生忍」  二、『玄義分』(二十三丁)「得益分〈乃至〉出在第七観初」及び経の示観縁、第七観、得益分の疏。  三、『化巻』本(六丁)  四、『和讃』観経讃。 【義相】 一、得忍分斉・二 1・名義を弁ず・二  @第一に総じて無生忍を釈す。無生とは所詮の涅槃法を指し、忍とは能得にして耐忍するの位なり。  A第二に別して喜悟信を得、信に因て無生忍を得。故に『序分義』(三十六丁)に「茲の喜に因るが故に、即ち無生之忍を得ることを明す。亦喜忍と名く、亦悟忍と名く、亦信忍と名く」と云と。此の義は喜悟信を以て能得の信相とし、無生忍の一を所得とする意なり。  今曰。信心歓喜に依て無生に耐忍する広大慶喜を得、仏智を大悟して、無生に耐忍する廓然大悟を得、決定信に依て無生に耐忍する広大周遍の信徳を得なり。此は、喜悟信を一度は所得の益とする意なり。 2・地位を定む。 弘願の得忍一定すべからず。或は次如弥勒と云ひ、或は不退転と云ひ、或は歓喜地と云ひ、或は十信中の忍と云ふ。 問。何故十信中の忍とするや。 答。諸師が深位とするに簡び、凡夫地より初めて得るの無生忍なることを示して、以て為凡の経意を顕はすなり。 二、得忍の場所・二 1・七観得忍・四  @依経釈現文故=去行を請するが故に前の光台に得忍なし【玄義分、七観、利益文、示観縁、般舟讃に云々】  A順今経法相故=聖道誘引の経なるが故なり(捨聖帰浄【光台】従要入弘【七観】)  B韋提権人之故=為未来世は示観縁以下に顕はす。権人に自の得忍は不要なるが故なり。  C序分に無正益故=諸経中序分に正益を与ふる例なし。 2・光台得忍・七  @真土を観見するが故。  A祖釈に依るが故=『化巻』本(六丁)。『和讃』【光台現国のその中に等】。『略書』(六丁)。  B第七科釈(忻浄縁)に依るが故。  C純熟韋提故。  D依正並見故。  E心歓喜を以て光台と為す故。  F示観縁釈に依る故=『序分義』(三十六丁)「上光台K見の如く」等の文。 問。権人とするときは如何。 答。終南に権人の判釈なし。西河の権人とするに得忍を談ぜざるもの思うべし。 問。光台家は七観の得忍を無関係とするや。 答。韋提は光台にて密に得忍し、七観に至りて顕はに披露するなり。何者一に諸師の観成得忍に簡ぶが故に。二に為未来世の経意を顕はすが故に。 【已上】