三七、念仏摂取
【出拠】
　一、『観経』第九真身観「念仏衆生摂取不捨」文。
　二、『定善義』（二十六丁）真身観釈。


【義相】
一、念仏分斉


問。念仏とは称念なりや観念なりや。
答。称念也。『定善義』（二十七丁）摂取不捨の三縁の益は諸行に対す。又『礼讃』（八丁）の「摂取不捨故名阿弥陀」、『同』（三十七丁）の「唯有念仏蒙光照」、『観念法門』（十二丁）の「但有専念阿弥陀仏衆生」、『行巻』（三十八丁）の「摂取不捨故名阿弥陀是曰他力」、『安楽集』下（三丁）は称名の始益として万行に簡ぶこれにて知るべし。
問。『定善義』（二十六丁）に科して正明観身、別相光益有縁【従蒙量寿仏〈下至〉摂取不捨】とす。これ観益にあらずや。
答。念仏摂取は所観の境にして、有縁の類とは称念の行者をさす。故に三縁釈を以て其の義を顕すなり。
問。経文直ちに称念の見込みありや。
答。一に、摂取不捨は阿弥陀の名義なるが故に。二に摂取摂生は真仮に通ず。不捨とは実禄究竟にして、暫用還廃の方便法に簡ぶが故に。 
二、摂取権実 

問。真仮通局如何。
答。前答を以て知るべし。 
三、真身観仏


問。真身観の仏は化身なりや真報身なりや。
答。一に数量を説が故に。二に観門所見の仏身なるが故に化身なり。
問。『論註』上（二十三丁）に『観経』の六十万億の数を取りて真仏を顕はし【『勧章』之に同じ】、又「真身」と云へば化身にあらざるべし。
答。数量に凝滞するもの化身なり。故に『四法大意』（四十四丁）に「観門の所見につきてあかすところの身なるがゆへに〈乃至〉なを分限をあかせる真実の身にあらざる義をあらはせり」等。又『化巻』（一丁）及び『改邪鈔』（六丁）に云々。又真身とは此界の画像木像に対す。即ち第八像観に対して真身と云ふ【俗に生如来と云が如し】『註』に取て弘願の真仏とするは、数即無数の故に、又仮の仏身が実益を施すは。従化入真の仏意を顕はすと云ふも得たり。 
【已上】