三八、三心分斉 【出拠】 一、『観経』上々品「一者至誠心、二者深心、三者廻向発願心」 二、『化巻』本(六丁)已下 三、『二巻鈔』下(三丁)已下 【義相】 一、定散通摂  上々品の三心は下は八品に通じ、上は定善を摂す。『散善義』(十二丁)に「此三心亦通摂定善之義」と云ひて、外は諸師が上三品のみの三心となすの謬解を破し、内は従仮入真の旨を顕はす【定散何れも真に入ること、三心の従仮入真の如し】故に定散に通ぜしむ。 問。経文果たして然なるや。 答。一に十九願開説なるが故に、願の三心定散諸行に通ず。二に三心の経文は九品の総説なるが故に、精進勇猛を以て上々品の三心とし、上中以下の定散行に会合す。廻向心即ち挟善趣求の故に。三に輩品開合の異なるが故に、上輩中に定善(見無量寿仏)を摂す。 二、要弘真仮  @此経隠顕に通ずるが故に。  A経文従容なるが故に。  B但信往生【弘願】と信行相合【下に説く要門三福行と回向信と合する故】するが故に。  C三心三願(至心【三願】深心【十八願信楽】廻向【二十願回向心】発願【十九願発願心】)を合説するが故に。此の義『礼讃』前序に依る。 三、願経開合  三心【観経】の深信より成ずるものは弘願位、廻向信より成ずるものは真門位、発願心より成ずるものは要門位なり。 問。三願各此の三心なきや。 答。既に弁ずる如く拠勝門に就て云へるのみ。 問。何故弘願は深心を拠勝とするや。 答。仏勅を仰信するの無疑の信相を深心と顕はす【欲生中に回願心を存す】名号を以て己が善根として廻向するが故に、自力策励の真門とす【仏語を信じ発願するの意存せり】。諸善を西方に向て発願するが故に要門となる【仏語を信じ回向するの意を含む】。 問。欲生と発願と同別如何。 答。或同或異なり。或異とは十九願の如く発願と廻向と並べ誓う時は左右あり。一に発願は弥陀に対し欲生は所期の果を希求す。二に三業を真実ならしめて、これを発願【希求】するが故に欲生心を成ず。或同とは発願欲生は別義なし。何者共に願生心なるが故に。願文は或異にして経は或同なり。 問。然らば願経相望すれば四心となるに非ずや。 答。開合互顕し自利利他真仮ならしむる者、更に差し支えなし。 【已上】